不器用なシタゴコロ


「―5周年ってことで。
もうひとつサプライズがあります」




ミズキクンの言葉に。

場内がまた騒がしくなる。





「―シングルにもしない、アルバムにも入れない。
今日しかやらない曲をやります」





それだけ言うとミズキクンたちは。

とーやクンひとりをステージに残して捌けてしまった。





…なにが始まるのか。

ドキドキと緊張感が体の中でグルグルしてる。





とーやクンは。

“フッ”と口元を緩ませると。

ステージ中央のモニターに腰を落とした。





「―俺、前から気になってた猫がいたんだ」





唐突に始まったとーやクンの話に。

みんなが耳を傾ける。





「―野良猫なのか飼い猫なのかもわかんない。
でも気になる猫でさ〜。
ずっと見てるだけだったんだ。
でも、ライブでやる曲作ったトキに…話が変わった」





“ドクン”





その言葉と一緒に。

とーやクンの表情がほんの少し変わった。