なんで、今?!
ライブ前だよ?!
一番忙しい時間じゃないの?!
ドキドキドキと。
心臓の動きが早くなっていく。
名前見ただけで“コレ”って。
やっぱ重症だわ、私。
自分自身に少し呆れながら。
ドキドキする胸を押さえて通話ボタンを押した。
『…はい』
「あッ!!よかった出てくれて!!」
『…は?』
ケータイ越しに聞こえたのは。
とーやクンの声じゃない。
発信元はとーやクンのケータイなのに?
『…誰ですか…?』
とーやクンより少し低い声。
この声。
聞き覚えのあるような、ないような…。
いや、どこかでこの声…。
「声くらい覚えてよ。
何度か電話でも話してるのに」
『…え?』
「俺、ミズキ」
『は?ミズキクンッ?!』
さっきまでの“ドキドキ”が嘘のよう。
…背中にイヤな汗が走った。

