「前にケータイ拾ったよね?
あれってちゃんと返せたの?」
『あ…返した、よ?』
…なんだ。
改まって言うから何事かと…。
「…その人とはどうなった?」
『……え…』
真顔の沙保が“ズイッ”っと迫ってくる。
…いや〜…。
そんなに迫ってこないでクダサイ…。
顔が怖いよ、沙保サン…。
「ケータイ拾った辺りから柚、おかしいよね?」
『そ、んなこと…』
「その人と、なんかあった?」
沙保はたまに鋭い。
なんでわかるんだろう。
「なんかソワソワしたりいきなり顔赤くしたり。
…まぁ、いい方におかしかったからほっといたんだけど。
…目、腫らして仕事来たり。
遠く見てため息ついたり…」
沙保は小さくため息を吐く。
私は沙保の言葉を黙って聞いてることしかできなかった。

