不器用なシタゴコロ


『…もう忘れるから、ミズキクンたちも忘れればいいよ』

「なんで?!忘れる必要なんか…」

『私は2sbBのファンのひとり。
それ以上でもなければそれ以下でもない』





“フゥ”と小さく息を吐き出すと。

気付かれないようにそっと涙を指先で拭い。

顔を上げた。





『私の好きな人が、ファンを弄ぶような人だったなんて…。
考えたくもない』





それだけ言うと。

連れてこられた道を引き返した。





「ちょッ…ゆずチャン?!」





ミズキクンの声と気配が背中を追い掛けてきたけど。

私は逃げた。





ミズキクンからも。

自分の気持ちからも…。





雑誌もCDもクローゼットの奥にしまおう。

見ればイヤでも思い出してしまうから。

背中を押してくれたあの曲も。

暫くキライになるよ。





―答えなんて

頭で考えて出るような複雑なモンじゃない

目を瞑ってカウントダウン

目蓋の裏に浮かんだのはなに?―





だって。

目を瞑って浮かぶのは。

目を細めて笑う笑顔のとーやクンだから。