不器用なシタゴコロ


それはお店の外に出ても止まることなく。

ズンズンと先へ進む。





『ちょッ…離して…ッ!!』





私があげる声なんて聞こえないかのように。

居酒屋からどんどん離れていく。





どこに連れていかれるのかもわからない。

掴まれた腕は離してもらえそうにもない。





ただ。

居酒屋で目に入った姿が現実なら。

これ以上私に何をするつもり?

もういいでしょ?

私は、もう…。





『…離してってば!!』





ようやく解放されたところは。

人気のない裏路地。



掴まれていた腕に痛みを残して。

私をここまで引っ張ってきた人は言葉を発した。





「…こうでもしなきゃ話、聞いてくれそうにないから。
手荒な真似してごめんね」





目の前にいるのは。

薄明かりでもわかる。

居酒屋で見た見覚えのある姿。





…ミズキクンだ。