不器用なシタゴコロ


運転席に座り直したとーやクンは。

“フッ”と一瞬だけ目を伏せると。

柔らかく口元に弧を描いて私と目を合わせた。





それは数秒前とは違う。

私の知ってるとーやクンだった。







「…きっと“モモ”ならこーゆー風にするんじゃないかと思ってさ」

「…え?」





背もたれに背中を預け。

グーン、とひとつ。

伸びをするとーやクン。





「ヤツはヤキモチやきだから」





そう言ってまた微笑んだとーやクンは。

やっぱり私の知ってるとーやクンで。





じゃあ、さっきのは。

なんだったんだろう…。

モモクンの真似をした、だけ…?





「とりあえず、行こうか。ちょっと歩くけどヘーキ?」

「あ、うん。大丈夫…」





何事もなかったかのように車を降りていくとーやクンに。

なんだかモヤモヤしながら私も車を降りた。