不器用なシタゴコロ


そんな心の叫びなんて届くはずもなく。





「…俺のことだけ、見てればいいんだよ」





指先で触れられていた頬は。

いつの間にかとーやクンの手のひらに挟まれていて。





「や、ちょっ…?!と、とーやクンっ…?!」





逃げようにも逃げられず。

とーやクンとの距離が狭まるばかり。





「ちょっ…離して?ね?」

「…この煩い口、塞いでやろうか」





少しでも動いたら。

唇が触れてしまいそうなくらい近づいているのに。

低く囁かれる声に。

何かを射るような強い視線に。

さっきまでとは別人のようなとーやクンから目が離せなくて。

瞬きすら忘れてしまった。





「…なぁんてね」

「………え?」








パッ。



両頬に触れる感覚がなくなったと同時に。

とーやクンが離れた。