「いいよー」

「「「え゛っ」」」


たこ焼きパンがほかほかと温かくって、私の顔は崩壊寸前だ。


「紗月あんた‥」

「う?」


気がつけば、不思議そうな顔で私を見つめる2人。


「や、待て待て。紗月だよ?」

「だよね。紗月だもんね」


私をじっとりと見ながら、何やら私の名前を確認してた。


「私は紗月だよ?」

「「知ってるよ」」


せっかく名乗ってあげたのに……一蹴された。


「マジで言ってる?」


上履きを持ったままの男の子まで。驚いたように瞳を開いていた。


「何を?」

「や、その‥付き合って欲しいんだけど」

「う?良いよ?」


私がそう答えると、3人は一斉に長いため息を吐き出した。

そして、男の子は私の上履きをパタリと落っことす。


「ベタだ」

「ベタだね」

「俺もそう思う」


なんか一気に暗くなった雰囲気を、私なりに和まそうとして。


「どこ行くっ?」

「「「はぁぁぁー‥」」」


いっぺんに大きく息を吐かれる。


「なんだようっ」

「紗月、涼平くんは‥」

「や、待って」


背の高いほうの友達を制止した男の子は、フッと笑って、


「じゃー今日の放課後、空いてる?」

「ん?うん」


まだ特に部活も決めてない私。放課後は暇人だし。


「おし。1年は何限まで?」

「え‥と」

「今日は5限だよ」


ちっちゃい方の友達が教えてくれた。


「じゃ迎えに来るよ」


そう言った男の子はしゃがみ込み、落とした私の上履きを拾って‥


「はい」

「う?」

「御足をどうぞ、お姫さま」


って上履きを差し出した。

私は足を上げて履こうとしたんだけど‥


「わったたた!!」


よたよたとバランスを崩す。


「あーっはははは」

「さーつきー。その高さでー?」


爆笑してる2人の声が教室中に響いて、


「ぷっ、くくく。飽きねえよ、あんた見てると」


思わず肩を掴んでしまっていた目の前の男の子の、ふんわりした笑い顔が近くて……


「わわっ、ごめんっ」


なんだか恥ずかしくって。


「顔、赤いよ?」


手で触らなくてもわかるくらい、顔が熱かった。