サラサラ長めの髪に、整った顔立ち。目はあんまり大きくないけど、なんかこう‥チカラがあるっていうか。すなわち、


「イケメン!」

「は?」

「あーっはっははは」

「紗月ぃー」


思ったことがすぐ声に乗ってしまうタイプ。たまに後悔するときもある。……いや、いつも。


「で?」

「う?」


この人、背が高くて嫌だ。圧迫感がある。怖い。


「そーだよ、この子が紗月」

「涼平くんついに?」


そう呼ばれたその人は、


「これ」


って腕を伸ばした。


「おおーっ」

「あんたのだろ?」


その手にぶらぶらしてたのはまさしく!


「私の上履きっ」


拾ってくれたんだ!良いヤツじゃん。


「ありがとっ」


私はお礼を言って上履きに手を伸ばした。

ひょいっ


「う?」


ひょいっ


「あれ」


ひょいっ


「むー‥」


……返してくれない。


「あんた面白いな」


クツクツと笑うコイツと、げらげら笑ってる後ろの2人。


「ぬーっ」


ぴょんぴょん飛んで手を伸ばしても、まったく届く気配がない。


「う゛ー‥」

「わ、わわっごめんね、紗月」

「泣かないでー!そんな紗月が可愛いよっ」


泣いてないけども。

抱きついてきた2人にサンドイッチにされ、顔が潰れる。


「ぷっはははは」


それをさらに前のコイツに笑われた。


「あんた、たこ焼きみてーな顔してんな」


それを聞くと思い出してしまう。今日も食べられなかった、限定のーー‥


「たこ焼きパン‥」


今度は本当に泣きそうになる。


「おわっ、笑って悪かったよ。ほら」


何故だか急に慌てだしたコイツは、上履きとは反対の手を差し出した。


「え‥」


その手にあったのは、


「良かったじゃん紗月」

「これでやっと食べられるね」


入学してから1度しか食べたことのない、念願の‥


「たこ焼きパンだぁ」

「くくっ、やるよ」

「ありがとーっ」


まだ温かいそれを両手で受け取ると、顔がニヤケる。


「んで、上履き‥」

「お!上履きっ」

「返して欲しい?」

「うんっ」

「じゃ、付き合って」