聞きたい。
聞きたいよ。
輝がどうして施設にいたのか。
どうして、あそこに行かなければならなかったのか。
気になって仕方ないんだよ……
『そんなに気になる?』
『……へ?』
輝の突然の言葉に、ただア然。
『さっきから声に出てるよ』
『え……えぇ!?』
まさかの事態だ。
こんな事、口に出してたなんて……!
『聞きたくないなら話さないけど』
っ聞きたいです!
聞きたくてたまらんです!!
『綾香がチューしてくれたら話してあげる』
『は?』
『タダより高いもんは無いってやつよ』
シシッと意地悪に笑う輝。
つか、ここ電車だっつの!
キスなんか出来るわけない。
ってか、車内じゃなくたって出来ないよ!
『ま、無理にとは言わないけど?』
く、悔しぃ~!
話す気がないから、そんな無茶言うんだ。
話したくないからキスなんて……
『歯……食いしばりな』
『え? 綾香?』
『やったろーじゃん。 キスってやつを』
二度と軽口叩けないように、思い切り打(ブ)ち噛(カ)ましてやろーじゃないのよ。
『ちょッ 綾香!』
グッと胸倉を掴んで、顔を寄せる。
この口。
馬鹿な事しか言わないこの口を塞(フサ)いでやる。
『わっ ちょっ! 待っ……ッ』
「待って」と同時に重なるはずだった唇が、ガッと歯をぶつけた事で悲痛な叫びに変わる。
『痛ってー……』
ジンジンと痛む口元を押さえながら、同じようなしぐさの輝を睨む。
『さぁ、話しなさいよ』
『お前なぁ……』
『キスしたでしょう!?』
どんなキスでも、キスはキス。
約束は守ってもらうよ!
『……わかったよ…… 簡単に話す』
『簡単にぃ!?』
『いや……ちゃんと話します』
うんうん。
約束はきーっちり守ってもらわなきゃね。

