♂GAME♀

まるで収穫がなかったわけじゃない。
輝の出身もわかったし、「輝」っていう名前が本名なのもわかった。

だけど、こんなに気が重いのは、その情報が次に繋がらないって事だ。



『おかえり』

名古屋駅の改札前。
予想もしなかったお出迎えがあった。

『輝!?』

絶対にここにいるはずのない人物。

だって私、輝に名古屋に向かう事言ってないもの。

『咲耶に聞いて迎えに来た』

ああ、なるほど。
あいつ見かけによらず口が軽いな……

『わかった? 俺の名前』
『……全然。 教えてくれなかった』

「そっかそっか」と言って笑う輝。
その顔が少し寂しそうに見えて、言葉を失った。

「失くしたもの」
それは一体、何の事なのか。

輝が「曖昧」と言った幼い頃の記憶の事か……


『帰ろっか』

差し出された手には、一枚の切符。

ここから、東京まで。
輝は私の分まで用意してくれたらしい。

……これを受け取ったら、負けになってしまう気がする。
だって、これ以上は何をしていいかわかんない。

せっかくくれたヒントも、すぐに行き止まりになっちゃったし。

もう、このゲームは終わりが近い……






『電車って久々ー』

東京に向かう途中、輝はそう言って車内のカーテンを開けた。

ってか、何であんたまで普通電車なのよ。
今日だけで12時間以上も電車ん内なんですけど。

一日は、24時間しかないっつーのに……


『輝さぁ。 園長さんが会いたがってたよ』
『は?』
『は?じゃなくてー、次は輝と来るように言われたの』

「失くしたもの」の話は何となく勇気がなくて、言い出せなかったけど、一応それらしい事は伝えた。

園長さんに頼まれたもんね。
仕方なくだよ。

『んじゃ行くよ。 綾香とのゲームが終わったら』
『いや、早く行きなよ…… 何か話したい事でもあんじゃないの?』
『ははっ、かもね』

呆れた。
かりにも自分の育った場所でしょ?
たまには会いに行こうと思ったりしないのかな。

ってか、そもそも何で輝があんな所に?
あーゆう所って、何か事情のある子供が行くんだよね?

輝も……何かあるのかな……