列車に揺られてもう4時間。
メモを頼りに普通電車に乗り込んだけど、さすがに飽きる。
知らない景色ばっかだし、駅名も知らない名前ばっか。
もう、アレだね。
アレしか言いようがない。
「あいつに騙された」
これしかないよ。
どこのどいつが6時間もかけて名古屋に行くんだよ!!
コマメに乗り換えあって寝れねぇーっつの!
帰りは絶対に新幹線にしてやる……
『どこに向かいます?』
ようやく着いた名古屋駅。
タクシーに乗り込む時には、もう昼を過ぎていた。
『たいようの家っていう、児童施設に』
詳しい住所も知らないから、後はこの運転手の腕にかかってる。
無事に着きますように……
そう願いながら、乗り換えの駅のコンビニで買ったパンの袋を開ける。
……あれ?
タクシーん中って食べたり飲んだりしちゃ駄目だっけ?
煙草は駄目ってテレビで見たけど。
うーん……
降りてから食べればいっか。
それにしても、さっきまで都会で賑やかだった景色が、少しずつ寂しくなっていく。
ビルがなくなって人が減って、どんどん田舎になってって……
そんな景色がしばらく続いた後に、ようやく車は停止した。
『着きましたよ』
そう言って指差されたのは、幼稚園のような小さな建物。
砂場に滑り台にブランコに……
養護施設なんて初めて見た。
もっと厳重で刑務所みたいなのを想像してたから、ちょっと拍子抜け。
『ありがとうございました』
タクシーのおじさんに料金を払い、とりあえず門を開けてみた。
『どちらさまですか?』
と、同時に門のすぐ脇の花壇から女の人が現れる。
『何かご用ですか?』
明らかに不審者を見るような怪訝そうな顔。
しまったなぁ。
先に電話しておけばよかった。
『あの、ご用は?』
『……突然で、すみません。 ヒカルという人に心当たりはありませんか?』
本名かどうかもわからないのに、無謀(ムボウ)すぎる。
絶対、この人も困ってるよ。
『私は存じませんが』
……ですよね~。
こりゃ、とんだ無駄足だったかな。
お金も一万近くかけたのになぁ。

