♂GAME♀



出発は明日の早朝。
場所もハッキリしてないけど、行けばなんとかなる。

別に海外に行くわけじゃないんだから、誰かに道を尋ねる事だって出来るし。




それと名古屋に行く前に、どうしても話しておきたい人がいる。

『私、たいようの家に行くから』

この咲耶っていう馬鹿ホストだ。

『ようやく動く事にしたんだね』

なんて、白々しく言う咲耶。

『あんたが無理強いしたようなもんだよ。 おかげで久々のバイトまでするはめになっちゃったし』
『ふふ、いい事じゃないか』

いい事って言えばそうなんだけどさぁ……
そんな勝ち誇ったように言われると腹立つんですけど。

『じゃあ、そんな偉い君に、上手なお金の使い方を教えてあげようか』
『え……?』
『これだよ』

胸の内ポケットから出た小さなメモ用紙。
そこには……

――――――――――――――

6時間27分 ¥6,020
乗り換え3回

東京→沼津
(JR東海道本線)
沼津→浜松
(JR東海道本線)
浜松→豊橋
(JR東海道本線)
豊橋→名鉄名古屋
(名鉄名古屋本線特急)

名鉄名古屋駅から名古屋駅まで
徒歩で歩こう(約4分)


――――――――――――――


まさか、これって……

『私に普通電車で行けって言うの!?』

そうとしか思えないんだけど!

『3分の2以下の料金で行けるなんて素晴らしいだろう?』
『6時間とか書いてあんじゃん! 絶対無理!』

始発で出たってお昼近くなるじゃん。
これは、さすがに無茶だってば。

『ま、僕はこの方法で行ったけどね? たいようの家まで……』
『へ?』
『駅からはタクシー使えば10分くらいで着くよ』

あれ?
なんだコイツ。

『むやみに知らない土地を歩き回るより、確実だろう?』

アドバイスしてるつもりなの?
一体なんなの。
輝といい、咲耶といい……

意地悪なんだか優しいんだか、さっぱりわかんないっつの。

『……とりあえず、頭に入れとくわ』
『はは、素直じゃないね。 ありがとうぐらい言えないのか?』

って、お前が言うな!!