「欲情=愛情」

私は女だから、そう思ってしまう。
智司が私に迫ってくるのは、私を好きだからだと自分に言い聞かせてた。

だから私も、それに応えようと夢中で演じてた。


『アレん時の綾香の声って、泣いてるみたいだよ。 聞いてて俺まで辛くなる』

輝はそう言って、洗濯カゴからまだ畳まれていないTシャツを出し、綺麗に畳み始めた。
男のくせに、几帳面な……

『手を繋ぐ、キスをする。 そんな事の方が、あんな無理矢理なのより満たされると思うよ』

……あぁ。
また涙が出そうだ……

私の気持ちを輝が口にする。
それが、こんなに嬉しいなんて……

そうだよ。
私は、智司とそうしたかった。

普通にデートして、笑って、キスをする。
そんな、普通の恋人のような事がしたかった。

『明日デートしよっか』

……って、はぁ!?

『服見たり映画見たり。 1日中、綾香が笑っていられるように』

せっかく人が感動してたのに、こいつって奴は……

『俺、自信あるよ。 絶対に綾香を笑わす自信』

そんな自信どうでもいいって。
相手が輝じゃ、意味ないもん。

『出張ホストを1日呼んだと思って…… どうかな?』

意味ないと思うけど……
興味ないわけじゃない。

それにプロがタダでデートしてくれるっていう、妙なお得感。

『いいよ。 ただし、すごく遠出して』

1日くらい「デリホス無料体験」ってのも、いいかもね?