♂GAME♀

少しずつ、少しずつ。
輝は足を進め、私の前に立った。

『イケないんだ。 彼氏なのに』

奴は悪魔だ。
天使の顔した、悪魔。

平気な顔して人の傷をえぐる。

そうゆうの言われるの大っ嫌いだし、言う人も嫌い。

男だから「気持ちいい」とか「最高」とか思えるんじゃん?

女なんて、男が思ってるほど、喜んじゃいないんだよ。

盛り上げるため、嫌われないために、声出してあげてんだよ。

『そっかそっか。 まだ綾香は女の子なんだぁ』

妙に勝ち誇ったような笑みを見せて、私の頭を撫でる。

『なによ。 あんたは男だって言うの?』
『さぁ、どうでしょう』

だから、一々そうゆうのがムカつくんだっつーの。

『試してみる?』

……は?
試す?

『試すって……何!?』

何言ってんの!?
それって私と輝が…って事だよね!?

『俺が男か、男の子か……自分で試してみたら?』

……馬鹿じゃない?
どうせ大人の男だって言いたいんでしょ?
優位に立ちたいんでしょ。

『私、帰る。 そんなお試しみたいな軽いノリでしたくないし』

私の頭に乗っていた輝の手を軽くあしらい、瞳に向かい真っ直ぐに睨み付けた。

『本気だよ。 俺も軽い気持ちでしたくないし』

しかし怯む事なく、奴は私の腰を自分に引いた。
不覚にも抱きしめられる形になってしまった事に危機感を覚え、輝の胸を叩いて抵抗する。

『ねぇ、俺のどこが不満?』

耳元で喋るな。
髪を撫でるな。

『……ッ全部だよ!』

そうゆうのマジで困る。
ドキドキさせんなっつーの!