園内を少し周り、早めの夕食をとる。
でも不思議と普通に食べられた。
ううん、不思議なんかじゃない。
胃に入って当たり前だ。
だって私達は、名古屋に来てから何も口にしてないのだから。
もちろん昼食さえも……
中林社長に会ったからか、行きに感じていた不安に潰されるような思いも、今はない。
『ねぇ輝、見て?』
夕食を済ませて外に出ると、綺麗にドレスアップした女の人や、スーツに身を包んだ男の人がいた。
『可愛いよね! 何かあるのかな』
輝の腕を揺さぶり言う。
それと同時だった。
リーン……ゴーン……
と、ゆっくりと鐘が鳴る音が響いた。
『結婚式だよ』
輝が言う。
『結婚式? ここで!?』
『運がいいと見れるんだ』
本当に運がいいと思った。
純白のドレスに身を包んだ美しい新婦。
キリッとした目に長身の素敵な新郎。
その二人が歩くのに合わせ、バージンロードの両側のイルミネーションが点灯する。
『夜の結婚式も素敵……』
私達も含めた遠巻きのギャラリーゎ息をのんで魅入る。
完全に室外で行われた式は、外国語で話す神父によって進む。
そして、次はいよいよ誓いのキス……
と、その時だった。
ぐいっと腕を掴まれ、式から少し離れた場所へと引っ張られたのは。
『ちょ、輝!』
「見ていかないの?」
そう聞こうとしたが、言葉は続かなかった。
それは、キスで唇を塞がれてしまったからだ……
『何して……ッ』
こんな沢山の人の前で!
『誓いの口づけ』
輝はフッと笑ってみせると、さっきよりも深く唇を重ねた。
『……馬鹿…… こんなキスしてない』
それどころか、新郎新婦の誓いのキスは、軽く頬にするだけのものだった。
幸い皆、式に注目していて私達には気づかなかったけど。
いや、見て見ぬふりかも知れない……
『綾香……俺……』
ギュッと抱きしめる力が強くて少し体が痛い。
『あのマンションを出るよ』
……え……?
『出て……ここで生活する』

