『話すって言ったって、そんな簡単に会える人じゃないんだよ!?』

それに名古屋に行けば、今以上に注目を浴びてしまう。

『俺は、本人から聞くまで父親って信じられないんだよ』
『でも……』
『ただ、すごく優しい人だったから…… あの人が父親なら嬉しい』

突然明かされた過去に、追われる身……
それだけでも混乱して不安になるはずなのに。

この人は、どれだけ強いんだろう……

『わかった…… 行ける所まで行こう』

仕方ない。
とことん付き合ってやるか!








次の日の朝。
私達はまだ薄暗いうちに起きて、一晩明かしたビジネスホテルを早々に去った。

そして……

『どうよ?』

東京駅の新幹線のホームで、輝は昨日とはまた違う帽子を取り出した。

長い後ろ髪は目深に被った帽子にしまい、ダテ眼鏡を……

『これで名古屋についても大丈夫だろ!』

ニッと得意げに笑うから、つい私も笑ってしまう。

馬鹿だなぁ……
そこまでして名古屋なんか行かなくていいのに……

まぁ、父親の居場所を知って、じいっとしていられる人じゃないって知ってたけどね。


『あ、清掃終わったみたい』

東京で折り返す新幹線の中でカバーを変えたり、エチケット袋をセットする人達が、揃ってホームに降りる。

『本当に着いてくるのか?』
『……うん……』

東京を発つまで、あと僅か……