『このお店の中で輝が待ってるから』
都会から外れた場所にある居酒屋の前で、咲耶が足を止めた。
『帰るの?』
『帰るよ。 輝と二人でいたら余計に目立つんだ』
さっきのホテルでは咲耶がいたから助かった。
こんな知らない土地でも咲耶が案内してくれたから平然と歩けた。
やっぱり、いなくなると思うと心細い。
これから何処に行けばいいんだろう……
『いらっしゃいませ~』
お店に入ると、店内の人が一斉にこちらを見る。
大して意味もないその行動が、とても恐かった。
今になって気付いたよ。
輝の秘密がずっと守られてきた理由に……
『綾香、こっちだよ』
と、お店の一番奥の席の人物が手を振る。
サングラスに帽子。
輝だと気付くのに時間がかかった。
『どうしたの、それ』
『似合うだろ? 途中で買ったんだ』
『に、似合うけど……』
何も悪い事してないのに、どうして輝がコソコソしなきゃいけないの?
何か間違ってるよ……
皆、そっとしておいてくれたらいいのに……
『Sweet Loverが売ったらしい。 俺の画像を』
『……え? 事務所が?』
『よくある事だよ。 金になるなら何でもやるってのは』
でも、だからって許せない。
今まで輝を使って稼いできたはずなのに……
『ま、中々のイケメンに撮れてるから許してやるか!』
何それ。
何それ、何それ。
『ッ馬鹿!!!』
何で笑ってんの!?
何で簡単に許しちゃうの!?
『利用されててッ、何で怒んないのよ!!』
ヘラヘラしてるのは前からだけど、たまには怒ったって……
『だって、最初から信用なんて無いんだよ』
『え?』
『所詮ネットのみのホスクラだし、本部の連中なんてイベントん時か、説教される時しか会わないからな』
……納得……できないよ……
『俺達ホストが本部を信用してないのと同じで、向こうも俺達に愛着なんて無い』
『そんな……』
『使える時に使って、切るときはバッサリ切る。 すぐ代わりがある消耗品と同じたよ』
「消耗品」
そう言い切った輝の顔が寂しそうで、それ以上の言葉は出せなかった……

