『はぁ、あー!! 最ッ悪!!』
動悸、息切れ。
おまけに汗だく。
こんなに走ったのは本当に何年かぶりだ。
『おかげでホテルから出れただろう?』
同じ距離を同じ早さで走ってきた咲耶は、涼しい顔で言った。
サイボーグか……
『ってか何で私まで囮にならなきゃいけないのよ』
それが一番気になるんですけど。
おかげで輝と別行動だしさ。
『輝は女と一緒だって情報みたいだからね。 女連れじゃなきゃ囮になんないし』
『……あっそ』
何の悪びれる様子も無し。
本当に私の事、女だと思ってんの?
『さて、輝と連絡取って合流しますか』
パッと携帯を出し、手慣れたようにダイヤルする。
しばらくして輝と通じたらしく、私達はホテルから大分離れた所に移動する事になった。
『ってかさぁ、私が輝を売ったわけじゃないからね』
電車での移動中。
扉に寄り掛かってウトウトする咲耶に向かって呟いてみた。
『咲耶だって、輝を売ったりなんかしないでしょ?』
私は疑われたみたいだけど、こっちは一応信じてんだからね。
咲耶の事は……
って言っても、寝てて聞こえてないか。
そう思って、私も目を閉じた時だった。
『悪かった』
隣から小さな声が返ってきたのは。
『輝を調べるほど熱心な人間なんて、綾香しかいないと思ったんだ』
『いや、熱心ってわけじゃ……』
ただあの時は、貞操の危機にあったわけで……
『大抵の女は、ゲームを真剣にやろうとも思わなかった。 ネットで調べてわからなきゃ諦める女が大半だ』
まぁね。
だって、何の情報もないんだもん。
私だって、輝のくれたヒントでやっと答えを見つけたんだしさ。
『だから他に考えられなかったんだ。 僕達意外に、輝を調べた人がいるなんて……』
そうか。
だから私が売ったなんて話に……
『私は気にしてないからいいけどさ……』
でも一体、誰なんだろう。
輝に恨みのある人……?

