芸能人の熱愛報道とか。
離婚騒動とか。
そんなのとは、比べものにならない世の中の騒ぎよう。
渇ききった砂漠に、ようやくオアシスを見つけたような、そんな歓喜の声。
何処のテレビ局も、視聴率を手にしようと、輝の情報を血なまこになって捜した。
輝が生まれてから今に至るまでの経緯を、面白おかしく映像化された再現フィルムが流れるまでに、そう時間はかからなかった。
『とりあえずホテルを出よう』
虚ろな目で再現フィルムを見つめる輝に声をかけ、鞄を肩にかける。
『マスコミに入口固められたら出れなくなっちゃうよ!』
もしかしたら、もう下にいるかも知れない。
出た瞬間にフラッシュたかれるかも……
でも、何とかして出なくちゃ。
そう思った瞬間だった。
ドンドンっと強く扉を叩く音がしたのは。
『……誰?』
まさか、もうここまで……
『僕だよ。 咲耶だ』
『……咲耶!?』
信じられない。
どうして咲耶がここに?
咲耶の名前を使ったマスコミじゃないの?
『いーよ、綾香。 開けてやって』
扉を開ける事を躊躇っていた私に、輝がフッと笑う。
『間違いなく咲耶だ。 あいつの声を、俺は間違わないよ』
何それ。
間違わないって……
まるで恋人みたいで笑えるじゃんか。
『幸せ者め……』
皮肉を呟きながら扉を開ける。
そこに立っていたのは、輝の予想通り、咲耶がいた。
『テレビ見て驚いたよ』
咲耶はうっすら汗をかき、呼吸は乱れてるようだった。
『とにかく、ここはもう囲まれてる。 僕もさっきテレビでここにいる事を知って、急いで来たんだ』
やっぱ、もう囲まれてるんだ。
不安で胸が張り裂けそうになる。
私達は、無事に帰れるのかな……

