父親とか母親とか、
本名とか正体とか関係ない。
そんな事で、私が好きになった輝が変わるわけじゃない。
そう言ってあげたかったのに、涙が邪魔をする。
『あーあー、ボロボロ泣いちゃって』
少し困ったように笑う輝。
ヤバイなぁ……
輝を好きになってから、涙もろくなっちゃったみたい。
『本当はね? ゲームで、自分の名前が知りたかったわけじゃないんだ』
……え?
『ゲームを乗り越えてくれる人を捜してたんだと思う』
大きな手が私の肩を抱き、ベンチへと誘導した。
意味深な言葉を残したまま、輝は近くの自販機に行ってしまう。
ゲームを乗り越える人?
よく意味が解らない。
『お待たせ』
と、言葉の意味を模索する私の前に、温かいミルクティーが差し出された。
『ありがとう』
そうか。
私が泣き出したから、落ち着かせようとして……
この人は、こういう時に人一倍優しい。
いつもふざけてばっかだけど、相談を持ち掛けた時に、ふざけた事は一度もない。
だから本人の知らない間に、女の子に想われてるんだ。
『父親と母親の事なんか、興信所で簡単にわかると思うんだ。 でも俺は、調べる事もしなかった』
『……どうして? 知りたかったんでしょう?』
だからゲームを始めた。
そう思ってたのに。
『ただ単純に怖かったんだ。 自分じゃ怖くて、答えなんて捜せない』
『怖……い?』
『だから俺の両親が何物か知っても、変わらず接してくれる人が欲しかった』
それが、ゲームを乗り越えた人なのね?
輝が、欲しかった存在……
『それが綾香だよ。 全てを知っても「好きだ」といってくれた綾香のおかげで、こんなにも晴れた気分になれたんだ』
輝が笑う。
私の目を見て真っ直ぐに。
この笑顔を、私が守ってあげたい。
そう思った……

