♂GAME♀

思いの外(ホカ)楽しかったドッジボール。
気付いたら2時間も走り回ってた。

『わざわざ送ってくれなくても平気なのに』

子供達を施設に送った後、輝は私と一緒に夜道を歩いてくれた。

『何言ってんの。 同じマンションだろ?』

あ、そっか。
送りたくなくても送らなきゃいけないんだ。
帰る所が同じだから……

『それよりいいの? 彼氏、怒ってんじゃない?』

と突然、輝が言った。

彼氏?
って智志の事?
智志が何で怒って……て!

『ヤバッ! すっかり忘れてた!』

智志を部屋で待たせてるんだった!

ヤバイよ〜ッ
絶対に怒ってる。
もう2時間以上も待たせてるし。

何とか言い訳しようとカチカチと言い訳メールを作成してみる。

《連絡遅くなってごめん(ノд-。)
コンビニ言ったら友達に会っちゃって…》

そこまで打った時、大きな輝の手が携帯をさらっていった。

『ちょ、何して……』
『忘れてたんでしょ?』

は?
何なのいきなり。

『正直に言えばいいじゃん。 「楽しくて忘れてました」って』

い、言えるかぁ!

『放っておいてよ! 輝に関係ないじゃん』

輝の手から携帯を奪いかえし、パタンと閉じる。
なにもメールじゃなくても、直接言い訳すればいい。
そしたら、こんな邪魔も入らないし。

『ねぇ、月がすごいよ』
『え?』

突拍子もない台詞。
それに釣られた私は天をあおぐように顔を上げた。

今日は曇り空。
星も月も見えない。
さっき寝転んだ時に知ったのに、それを忘れてたんだ。

『本当……隙だらけ…』

これが唇を重ねるための罠だって気付いた時には、もう遅かった。