告白を終え、目を閉じキスを待つ。
そんな私を前にして、輝は意地悪に言った。
『へぇ。 俺が好きなんだぁ』
満足げな笑顔に、悪戯な口調。
それに、期待していたキスもない。
『何よ。 好きじゃ悪いの?』
『んーん。 嬉しい』
『は?』
嬉しいとか、子供みたいに喜ばれると、何か拍子抜け。
「好き」なんて言葉、言われ慣れてるはずなのに。
『綾香は俺の全部を知ってて好きになってくれたんだろ? それ、凄い嬉しい』
と、急に真面目な顔をして、私の唇を親指で撫でた。
『もし親父が犯罪者だとしても、そうでなくても名前を出せないような奴でも、綾香は承知して惚れてくれた』
そうだ。
咲耶が言ってた。
輝は、自分を知るまで恋をしないだろうって。
きっと重荷になってたんだ。
お父さんの事……
『ずっと過去を気にしてたけど、綾香のおかげで気にならなくなってきたんだ』
『輝……』
『俺が何処の誰でも関係ないんだなって、安心したよ』
穏やかな口調に優しい笑顔……
少しでも役に立てた事が嬉しいと思った。
私、輝が何処の誰でも、きっと好きになってた。
本当に犯罪者の子供だとしても、惹かれていくと思う。
だって、
私が惹かれたのは、輝のこの笑顔だったから……
『何か照れるよ』
想いが通じ合って初めてのキスは、どうも気恥ずかしい。
今までが不意打ちだったから尚更だ。
『俺も。 気持ちの入ったキスなんて、綾香が初めてだから』
そう言って悪戯にキスをする輝に、どうしても顔が緩む。
「初めて」って言葉が、嬉しくって堪らないよ。
『ずっと傍にいて……綾香』
こうして、私達はキスをした。
「恋人」になって初めての、
そして、本物のキスを……

