『親父のためってわけじゃないけど、自己満足だよ』

私を抱きしめる腕に力が加わる。

『少しでも有名になれば、親父が俺に気付くかも知れないって』

意外と力があるんだなって思った。
こんなに痩せてるのに。

『だから、何をしてでもトップ3に入りたかったし、悪い噂でもいいから有名になりたかった』

いつか言ってた。
子供達と遊んだり、八百屋や魚屋と話してるのが楽しいって。

きっと、本当はそんな生活がしたいんだ。
体を使って稼ぐより、そんな毎日がいいんだ。

だから私は、輝の笑顔しか知らなかったんだ……

『寂しくなんかないよ』
『え……?』
『私が、ずっと輝の側にいる』

好きとか嫌いとか、
そんな事はどうでもいい。

『輝が寂しくないように、ずっといるよ』

そんな事より、輝の側にいたいと伝えたい。

親の愛が足りないなら、足りるように、私があげるんだ。

『ははっ』

と、急に笑い声。

『それって、俺の事好きって事?』

なんだよ。
落ち込んでると思って、言ったのに。

何だか生意気な顔してる。

『……嫌いじゃないけど』

だから、妙に恥ずかしくなる。

『好きって言ってよ』

と、急に掌をかえしたように上から目線の輝。

『じゃなきゃ、キス出来ない』

いつの間にか、手は私の頬に添えられてるし、なんか顔は近いし。

ってか、今まで無断でキスしてんじゃん。
それを今さら出来ないなんて……

『俺の事好き? 答えないなら、勝手にするけど』

どっちにしろキスするんじゃんか!
つか、もう触れそうなくらい近い。

なんだか甘い匂いに酔っちゃいそうになる。

ヤバイ。
ヤバイよ。

今すごく、キスしたい。

『……好き……かも』

好きだよ。
大好きだよ、馬鹿……