輝が私に一目惚れ?
そんな事があるはずない。
どうせまたからかってるんだ。
『まぁ、一目惚れって大袈裟なもんじゃないけどね』
『え?』
『泣いてるみたいな声を出す子だなってのが、きっかけかな』
泣いてる……?
私、泣いてなんかないのに?
『好きな男に抱かれてんのに、何で悲しそうなんだって』
輝は言葉を止め、私の腕を強く掴む。
『俺のが、もっといい声聞けるのにって思ったら、止まらなくなった』
真剣な目から、反らせない。
抵抗できない。
『正直あのゲームだって、綾香が負ければいいのにって思った事もあった』
掴まれた場所から体温が伝わって、頬まで熱くなる。
『俺なんかが、好きになっちゃ迷惑?』
そんなふうに、縋(スガ)るような目をされたら、返答に困るよ。
『迷惑なら、もうこんな事しないよ?』
「こんな事」っていうのは、この私を抱きしめる腕の事なんだろう。
力強くて、熱くて……
でも心地好い。
『迷惑じゃ……ないよ』
だって、私は好きになってしまった。
この優しい腕や、
暖かい心を。
『出張やってる間は、好きにならないつもりだったんだけどなぁ』
と、突然そう言って苦笑いする輝。
『何で?』
『だって、もうトップに立てないじゃん』
あ、そっか……
恋人がいたら、あんな稼ぎ方が出来ないんだ。
やっぱり私も、他の女の人に触れてほしくないって思っちゃうもん。
『トップに立たなきゃ、出張やってる意味ねぇんだよ』
『そんな事……』
『だってトップ3に入れば、写真が大きく載るだろ? そしたら、親父の目に入るかも知れないんだ』
まさか。
まさか輝がデリホスをしてるのって、
『お父さんのため?』
そうなの……?

