自分の気持ちに気付いてしまった今だからこそ。
もう智志とはいられない。
大好きだったけど、
あの頃の気持ちは、今はない。
もっと、大切な人が、
出来てしまった……
『ッだよ、それ!!』
ガンっと音と共に、蹴飛ばされたテーブル。
テーブルの上の物は、全て床に落ちた。
『顔か、それとも金か!?』
『……智志……』
『体とか言うんじゃねーだろうな!!』
違う。
違うよ、智志。
私が輝に惹かれたのは……
『綾香が、寂しくて泣いてんだよ』
……え?
『一方的に抱いて帰って。 また来て抱いて』
輝の言葉に、涙が込み上げる。
ヤバイ。
今にも声が漏れそうだ。
『あんたの性処理の道具じゃねーんだよ。 釣った魚に餌やんないとか、有り得ねーよ』
いつか思った事がある。
自分は、智志の何なんだろうって。
恋人なのか、セフレなのか、
ラブドールと勘違いしてないか?って。
輝が言った事の全てが、
私の気持ちだった……
『映画観たり買い物したり、普通の事が出来ないのかよ』
輝は、私を解ってくれた。
自然と笑顔になれるような、そんな毎日をくれた。
イルミネーション見たり、
アウトレットで買い物したり、
本当はずっと、智志としたかった事だった。
『だから許されるなら、俺が綾香を貰う』
少しだけ、智志の手が緩む。
輝の言葉に、圧倒されてしまったんだろう。
『アホくさくて、やってらんねーわ』
と、こ馬鹿にしたような笑みで、私と輝を見回す智志。
『好きにすれば? そんな女』
そして、乱暴に扉を開けると、外へ出ていってしまったのだ。

