何で輝が……
いや、呼んだのは私だし、
来てほしかったんだけど。
『ど、どっから入ってきてんのよ!』
ベランダから来るのは予想してなかった。
『こっちのが、早いと思って』
うんうん、そうだ。
こいつは、そんな無茶な奴だったよ。
過去にも何度かベランダから現れてるし。
『それより、綾香を貰ってもいんだよね?』
『へ?』
『俺が本気になったら、もう返せないけど』
……ビックリした。
こんな輝見た事ないから。
男らしくて、凛々しくて、
素直にかっこいいと思ってしまった。
『ホストなんかやってる奴が、本気で恋愛できんのかよ』
と、智志は私を解放し、代わりに輝の胸ぐらを掴んだ。
『どうせ、何人かいる女の中の一人なんだろ?』
勝ち誇ったように、うっすら笑みを浮かべる智志。
それに対して、反論は無かった。
ううん。
反論出来ないんだ。
だって、本当に私は、数多くの中の一人。
ただの隣人で、ゲームのために利用された。
ただ、それだけ……
『だったら、ホストなんて辞めてやる』
……え?
『元から、ホストを辞める時は本気で恋愛する時だって思ってたから』
何それ。
そんな真剣な顔されたら、自惚れちゃうよ。
私の事好きなんじゃないかって思っちゃうよ。
『綾香はどう思う? 迷惑?』
と、悪戯に笑ってみせる輝に、頬が熱くなる。
何よ何よ。
私に決めろって事?
奪うなんて言っておいて、狡いじゃないの。
『俺の事、好きじゃない?』
狡い、狡い、狡い。
好きに決まってるでしょう?
『……ごめん、智志』
今すぐ奪ってよ。
『私、智志とはやり直せない……』

