♂GAME♀


何で輝が……
いや、呼んだのは私だし、
来てほしかったんだけど。

『ど、どっから入ってきてんのよ!』

ベランダから来るのは予想してなかった。

『こっちのが、早いと思って』

うんうん、そうだ。
こいつは、そんな無茶な奴だったよ。

過去にも何度かベランダから現れてるし。

『それより、綾香を貰ってもいんだよね?』
『へ?』
『俺が本気になったら、もう返せないけど』

……ビックリした。
こんな輝見た事ないから。

男らしくて、凛々しくて、
素直にかっこいいと思ってしまった。

『ホストなんかやってる奴が、本気で恋愛できんのかよ』

と、智志は私を解放し、代わりに輝の胸ぐらを掴んだ。

『どうせ、何人かいる女の中の一人なんだろ?』

勝ち誇ったように、うっすら笑みを浮かべる智志。
それに対して、反論は無かった。

ううん。
反論出来ないんだ。

だって、本当に私は、数多くの中の一人。
ただの隣人で、ゲームのために利用された。

ただ、それだけ……

『だったら、ホストなんて辞めてやる』

……え?

『元から、ホストを辞める時は本気で恋愛する時だって思ってたから』

何それ。
そんな真剣な顔されたら、自惚れちゃうよ。

私の事好きなんじゃないかって思っちゃうよ。

『綾香はどう思う? 迷惑?』

と、悪戯に笑ってみせる輝に、頬が熱くなる。

何よ何よ。
私に決めろって事?

奪うなんて言っておいて、狡いじゃないの。

『俺の事、好きじゃない?』

狡い、狡い、狡い。
好きに決まってるでしょう?

『……ごめん、智志』

今すぐ奪ってよ。

『私、智志とはやり直せない……』