『話って?』
話したい事がまとまってるわけじゃないんだ。
ただ、咲耶とあのままお別れするのは、どうにも気分が悪い。
恋愛対象に入らないとしても、別の形で付き合っていく事は出来ないのかな……
『咲耶の事なら無駄だよ』
『へ?』
無駄?
私、まだ何も言ってないのに。
『いくら俺が親友に戻りたくても、咲耶にその気がない』
『そんな事……』
『そうだろ? 久しぶりの再会でも、あいつの目は俺を「異性」として見てた』
真っ直ぐ前を見据え、はっきりと言い切った。
私も、言い返せないって事は、どこかで咲耶の視線に気付いてたからだ。
咲耶は、輝を「友達」として見ていない。
『俺の好きと咲耶の好きは違いすぎるよ。 俺が咲耶を抱く日は、一生来ない』
輝を冷たいと思う人もいるかも知れない。
確かに、突き放し方に遠慮がない。
だけど、
『それでもいいなら、死ぬまで一緒にいてもいいと思ってた』
輝なりに、考えての決断だったのかも知れない。
『ま、出張やってりゃ男女問わず客は来るし、咲耶の気持ちは嬉しかったけどね』
別に、輝は咲耶から逃げてるわけじゃないんだ……
『何だか難しいね……』
少しでも力になれたら、って思ったけど、私じゃ無理そうだ。
『好きなだけじゃ、上手くいかないもんね』
恋愛は、相手があって初めて成立する。
いくらこっちが好きでも、駄目なんだ。
輝に振り回された日もあったけど、気付けた事もいっぱいある。
智志との事も、今となっては良かったのかも知れない……
『難しいから、お互いが好きになった時は、凄い幸せなんだろ』
『……うん』
改めて思う。
この笑顔。
さりげない優しさ。
時には真面目に説教したりするけど、
私は今、輝が好きだ……

