『無理矢理にごめんね』
いつまでも答えを出さない私に、輝は少し笑って言う。
ようやく見れた笑顔にホッとしたのもつかの間。
『もう付きまとったりしないから安心してよ』
輝は私を突き放すかのように、冷たい顔を見せる。
ふと思い出してしまった。
【いつか捨てられるよ】
そう言った咲耶の顔を……
『輝の目的は、自分を知る事。 そうでしょう?』
だから誰とも恋をしないし、本気にならない。
『ゲームと名付けて、自分を調べてくれる人を探してるんでしょう?』
だから、答えの出せない人達を切り捨てていくの?
咲耶も、私も……
『そうだよ。 俺は誰からも両親の事を教わらなかった。 聞いたところで大概(タイガイ)嘘でごまかされる』
シャツを拾い、袖を通し、ベッドに座り直す輝。
コーヒーを一口飲むと、フッと笑ってみせた。
『俺の親って、そんなに悪い奴なのか?って思う。 殺人? 強盗? 誘拐?
どんな凄い事してんだよって』
『ち、違う!!』
違うよ。
悪い人なんかじゃなく、手の届かないような凄い人。
犯罪者なんかじゃ……
『じゃあ言えよ!!』
突然の怒鳴り声。
肩がビクンと跳ね上がる。
『どこで何して、どんな奴なのか。 はっきり言ってみろよ!!』
こんなふうに感情を剥き出しにする輝は初めてだ。
涙が溢れそうになる。
『言えないんなら、そういう事なんじゃねーの!?』
本当の事を言ってしまいたい。
全て話して、喜ばせてあげたい。
こんなゲームから解放してあげたいよ……
『自分の親を知りたいって…… そんなに悪い事かよ……!』
きっと輝は会いたくなる。
お父さんを一目見たくなる。
そうなった時、どうしたらいい?
誰かにバレたらどうなる?
マスコミが押し寄せてきたら、どう守ってあげたらいいの?
それを考えたら、私の口からはやっぱり無理だよ……

