『ゲームの代償。 忘れたわけじゃないよね?』
小悪魔が笑う。
それだけで、体が熱を帯びたように熱くなるんだ。
帰りの新幹線の中や、夜ベッドで考えてた。
ゲームが終わった後の事。
輝のものになるという事も。
『覚悟は……してきた……』
そう、覚悟してきたんだ。
輝に全てを話すより、輝に従う事を選んだんだ。
『輝のものになる覚悟は……出来てる』
声が震える。
恐怖に似たような、期待とは程遠い感情。
覚悟してきたけど、やっぱ輝を目の前にしたら迷いが混じる。
『だったらさぁ』
と突然、顎(アゴ)を掴まれ強引に上げられてしまった。
『俺の目を見て言ってよ』
目が合って……反らせない。
『愛してるって』
『……え……?』
『綾香の覚悟を示してよ』
示すなんて言われても……
『俺の目を見て「愛してる」って言うんだ』
ジリジリと迫る輝の体に、逃げ出す事も忘れて立ち尽くしてしまう。
いつの間にか恐怖心は消え、落ち着きを取り戻せた。
『体だけじゃ駄目なの?』
「愛してる」は言えない。
だって、輝が本気で望んでないもの。
『一度だけ、輝とするから』
ゲームの答えを貰えなくて、きっと意地になってる。
私の体だって、きっと本当は欲しくない。
ゲームの代償に私自身を望んだのは、私を真面目に取り組ませるため。
そうまでして、自分の過去を知りたかったんだよね?
ねぇ、輝……?
『いいよ、一晩で許してやるよ』
……え?
『でもきっと綾香は、二度目を望んでくるだろうけど』
『ひ、輝ッ』
腕を掴まれ、ベッドに引きずり込まれる。
輝、本気なの……?

