『……へ?』
「本当に母親なのか」
私の失礼な言葉に返ってきたのは、思いもしない言葉だった。
『祖母よ。 輝は、娘の子供なのよ』
まさか、お祖母(バア)さんだとは思わなかった。
どう見ても50代だから……
『あの、両親はどこにいるんですか?』
気をとりなおしてオバサンに尋ねる。
一瞬だって緩む事のない険しい顔が、何だか恐かった。
いつも馬鹿みたいにヘラヘラしてる輝と血が繋がってるなんて、嘘みたいだ。
『娘は死んだよ。 あの男に殺されたも同然だ』
『……死んだ……?』
突然の事に、頭がまわんない。
あの男って……まさか。
『だから子供なんて反対したんだ。 あんな男の子供……』
やっぱりお父さんの事だ。
『自分の欲のために、あの男は娘を捨てたんだ。 おかげで娘は死に物狂いで働いて……本当に死んでしまった』
もう20年近く前の話だろうのに、オバサンの目には悔し涙が浮かんでいた。
咲耶は言った。
輝が父親に似ていると……
きっと憎いんだろう。
娘を捨てた男と、同じ顔を持つ存在が……
でも、だからって輝に当たるのは違う。
『輝は悪くないです』
輝は、何も悪くない。
輝が施設に行かなきゃならなかった理由にも、一人ぼっちにならなくちゃいけない理由にもならない。
輝は、なんにも悪くない。
『輝の父親は、ちゃんと生きていますか?』
どこまでも失礼な奴だと呆れているかな。
私だって、出来るならソッとしておいてあげたい。
過去の傷をほじくり返すような事したくないよ。
『ハッ……生きてるもなにも、どっかの大企業の社長なんてもんやってるよ』
『……社長……?』
『女と子供を捨ててでも、奴は金と地位が欲しかったんだろうね』
そんな……
そんな遠い存在の人だったなんて、信じられない……

