どうしても納得出来ない。
どうして輝は、自分を知る事が出来ないのか。
自分を知る事がそんなに悪い事なのか。
こんなにも納得出来ないでいるのに、東京に帰るなんて出来ないよ。
でも、これ以上どうやって調べればいいんだろう。
施設も学校も駄目だったのに……
『綾香』
と、突然の呼びかけにビクンと肩が跳ねる。
ビックリした。
「綾香」なんて呼ぶから一瞬、輝が来たのかと思った。
『どこかで少し休もう』
そう言われてみて気付いたけど、お腹が空いた。
昼食もろくに摂(ト)ってなかったし……
『輝の苗字を見ただろ? 神河なんて沢山ある苗字じゃない』
『……確かに』
『上川と書く方が一般的だろう』
メモ帳に書いて見せる咲耶。
確かに上川の方がよく目にする漢字だ。
もしかしたら輝のフルネームに違和感を感じたのは、そのせいかも知れない。
「神河輝」「上川輝」
同じカミカワでも見慣れた漢字の方が、しっくりくる。
『この辺りに住む神河が、何軒あるか楽しみだな』
……まさか。
まさか、神河を全て調べようって言うの?
確かに珍しい苗字ではあるけど、全く無いわけじゃない。
『とりあえず、どこかで電話帳を手に入れてから店に入ろう』
『う……うん』
無謀すぎると解っていながら抵抗できないのは、きっと頼る人がいないからだ。
もう、咲耶を頼るしかないんだって解ってるからだ。
『咲耶。 さっき電話帳ある所を見たんだけど……』
ちょっとまだ、咲耶を信頼しきれてないけど、今が協力する時なんだよね?

