『確か輝くん、15までいたのよね』
懐かしむような嬉しそうな瞳(メ)をして輝を語る女性。
母親のような……
そんな存在だったのだろうか。
『とにかく素直ないい子だったわね。 人に迷惑かけないように気を使ってたんだと思う』
まぁ、輝がいい子とか有り得ないですけど。
何てったって馬鹿なゲームを始めた張本人ですから……
『ほら、生まれた環境がアレでしょ? おかげで人に好かれるのが上手くなっちゃったんじゃないかしら』
「アレ」って言うのは、前に輝が言ってた事だろうな。
両親の事だ、きっと。
『でも本当は、お父様に好かれるための行動だったんだと思うわ』
『……え?』
『いい子にしてたら、お父様が迎えにくると思っていたんでしょうね』
輝は、父親の顔を知らない。
父親が輝を望んでいなかったから……
そんな父親でも、幼い輝は慕(シタ)っていたのかな。
いつか会いに来てくれるって信じてたのかな。
なんか……
すごく悲しい……
『お父様の方も、何度かここに足を運んでいたんだけどねぇ』
『え? お父さんが?』
『えぇ、自分の子だもの。 やっぱり気になるものなのよ』
だったら何で?
何でここにいる輝を引き取らないの?
ずっと、ここで待ってたのに。
『私が話せるのは、これくらいかしら』
そう言ってニッコリ笑う女性に、出かかっていた言葉が消えた。
お父さんの事、もっと聞きたいのに……
『あの…… 輝の事、もっと知りたいんですけど』
名前とか、誕生日とか、血液型とか。
もちろんゲームが大事だけど、それ以上に輝の事を知りたくなってしまった。
『ごめんなさいね。 あまり個人情報は言えないの』
……終わった。
輝の手がかりが、また一つ失くなった。
『家族ならともかく、友人だとちょっとね……』
園長と同じ言葉。
やっぱり輝が来ないと駄目なんだ。
このゲームは、一体どうなっちゃうのよ……

