『おはよ』
優しい声と温もりが耳をかすめる。
同時に、瞼(マブタ)に被われた瞳に眩しさを感じた。
『なんか食べる? 簡単なものなら作るよ』
そう言ってベッドを下りる輝は笑顔で、なんだかとても元気そう。
よかった。
熱が下がったんだ……
昨日お風呂に入らなかったせいか後頭部が痒くて、ボリボリと掻きながら、温もりの残るベッドに上半身をあずけた。
フワフワの羽毛が気持ち良くて、また眠ってしまいそう……
しばらくして、コーヒーとパンの焼けるいい匂いがして、目は完全に覚めた。
『すごい回復力……』
呆れてしまう程に元気な輝を見ると、昨晩の慌ててた自分が恥ずかしくなるよ。
『やっぱ熱ある時に飲んだのは失敗だったな』
『……飲んだ? 何を?』
『昨日は指名客と居酒屋行ってさ。 ついつい飲み過ぎ、みたいな』
ば……馬ッ鹿じゃないの!?
私がどれだけ心配したと思ってんのよ!
人が倒れるとこなんて初めてで、マジで死んじゃうかと思ったんだから!
『もう知らない! 心配して損したよ!』
側にあった枕を掴み、輝に投げ付ける。
病人だからって、もう許してあげないんだから!
『でも、嬉しかった』
突然、そう言ってベッドに座る輝。
『誰かが傍にいてくれるなんて初めてで、すごい心地好かった』
……なによ。
どんな甘い台詞吐いたって私の怒りは収まらないんだから。
『自分の事で綾香が焦ったり悩んだりしてくれたのが本当に…… 愛されてるってこういう事なんだって、知った』
『……輝……』
って、
『愛してるって、誰が誰を?』
『うん? 綾香がー、俺を』
『……私が……輝を……』
病人相手だからって人が下手に出てればいい気になって……
『調子乗んなっつーの!!』

