乗り気じゃなかった輝とのゲームも、目的が変われば悪くないなんて思った。
絶対に勝つからね。
覚悟してろよ。
……なんて、意気込んでみた昨晩。
今日、もうその決意に後悔しております。
『んで? 名古屋まで行っちゃったわけ?』
智志を怒らせてしまったからだ。
別に、自分で名古屋に行った事を言ったわけじゃない。
うかつにも、捨て忘れたタクシーの領収書が見つかってしまった。
『馬鹿じゃねーの、お前。 たかが隣人の名前ごときに、何でバイトまでしちゃってんだよ』
いや、冷静に考えたら馬鹿な事をしたなぁーと思うけど……
『だって…… 輝の奴、訳ありっぽいんだもん』
『訳ありだったら、何してもいいのかよ!』
『そういうわけじゃないけど……』
なんか、輝からのSOSかな?って思っちゃったんだもん。
それだったら、変に無視できないし……
『ほんと、お前の事わかんねぇ』
……わかんない?
『それ、私の台詞』
私だって、智志がわかんないよ。
『困ってるから、ほっとけない。 それじゃ駄目なの?』
昔の智志だったら、困ってる人を放っとかなかった。
どんな人にも優しかった。
昔だったら、一緒に解決してくれた。
『マジ、いい加減にしろよ!? あんま言うと別れたくなる』
……別れる?
面倒くさい。
鬱陶(ウットウ)しい。
もう、話したくない。
『そんなに言うなら、もういいよ』
別れてもいい。
せめて、輝の事が終わるまで……
『バイバイで……いい』
輝の事で、毎回言い争いになるんなら。
もう、バイバイでいいよ。

