「ありがと・・ね。」


笑顔で言って見せた。


すると先生は、口の端を上げて言った。


「もうあんなとこウロつくんじゃねぇぞ。」


「はーい。」


平常をまた装い言った。



「じゃあな。もうちょいでチャイム鳴るし走れよ。」


「うん・・。」



行かないで。


先生は、バイクの音を立てて走り出した。



あたしは先生が角を曲がって見えなくなるまで見てた。



先生のバイクの音がやけに虚しく残った。



先生が見えなくなった途端、すごく寂しい気持ちになった。



けど・・・ものすごくすがすがしくて。




井上の事は、頭の隅にも置いてなかった。



先生のバイクに乗った事。



これは、あたしの一生の思い出だよ。



この日の夜は、井上からのメールもなかった。