ロールプレーイング17

 僕は歩いた。涙で滲んだ世界を。空が僕を睨みつけようと。陽炎が僕の行く手をくらまそうとも。僕は歩き続けた。僚介の住んでいた団地を過ぎると、十二階建てのマンションがあるセキュリティーなんて無い。誰だって全ての階を行き来することが出来る。僕はそれを知っていた。目的は一つだった。そしてエレベーターに乗り込んだ。十二個のボタンが並んでいた。⑫僕はそのボタンを押した。ドアが閉まりゆっくりと僕を乗せた箱はスピードを上げ、上昇した。真っ青な真夏の青空が、手すり越しに広がっていた。全てを飲み込んでしまいそうなほど抜けるように青い空だった、、。
 僕は扉の外に足を踏み出した。一歩二歩と、、。黄色の古びたエレベーターホールの床を越えて、僕はコンクリートの階段を屋上目指してゆっくりと上った。窓を開け、そこから外に身を乗り出す。十二回の屋根の上。さえぎる物は何もない。それと同時に僕を守るものも何一つ存在しない。僕は歩いた。この屋上の最先端を目指して。民家がみんなミニチュアの模型の様に見えた。僕の通った小学校、中学校、僕が生まれてから育った町。全てを一望することがきた。涙でいっぱいだった。涙が止まらなかった。お父さん、、お母さん、、、。みんな、、。
 十二回の屋上。僕は遂にその端にたどり着いた。僕は下を覗き込んだ、、。
 足がすくんだ、、。僕はその場にしゃがみ込んだ。恐怖で一気に力が抜けた。急激に感情の波が押し寄せてきた。何も聞こえなかった。体のふるえが止まらなかった。神経がズタズタになりそうだった。涙を止めることは出来なかった。
僕はこの恐怖に打ち勝つことさえもできない。怖い、、、。〝死にたくない″僕は声を大にして泣いた。体の水分が全て涙になって消えてしまいそうだった。僕は本能にさえ、打ち勝てない。臆病でちっぽけな人間だった。