ロールプレーイング17

夕飯を食べる頃に僕は思った。今頃僚介は何をしているのだろうって、配達はもう終わったのかな、終わってるよな。家にも夕刊はもうとっくに届いているし。遠くからセミの鳴き声が聞こえてきた。セミは七年土の中で過ごし、外の世界では一週間しか過ごせないという。土の中から出たセミは一番初めに何を見るのだろう、そして何を感じ、何を求め、そして死んで行くのだろう。空気ぐらい軽い気持ちで僕はそんなことを考えた。
僕は部屋にもどり、本棚から一冊の本を取り出した。気付けばこの本は随分前に読んだ本だった。僕が一番好きだった本。何度も読み返して大分傷んでいた。僕は本が好きだった。僕はいつも一人だったから、、、。本は開いた瞬間から、僕の手をとり新しい世界へと導いてくれた。少なくても、本を読み終えるその瞬間まで。学校の教室、電車を待つ駅のホーム、そしてこの僕の部屋。どこにいたって一人を紛らわせてくれた。僕は一人じゃなくなった、、。

〝僕は本が好きだ。〟

たった二時間で全てを終わらせる映画なんかよりも、、、。

そのとき僕はふと思った。僕はこの自分の手で、〝本を書いて見たい″と。

これは夢?僕の夢?一筋の光が見えた気がした。僕はまた、机の椅子に座りパソコンを開いた。マウスのキーでMicrosoft Wardをクリックした。画面には真白な空白のページが浮かびあがった。僕はしばらくその空白の画面を見つめていた、この空白のページに僕の思いを馳せるように。

キーボードをたたき始めると、いつのまにか真白だった空白のページが僕の〝色″でゆっくりと染まって行くのを感じた。一文字ずつ、ゆっくりと、僕の言葉に出来なかった言葉たちが、空白のページを埋めていった。

あの時と一緒だった。あの本が一人ぼっちの僕の手を引いてくれたあの時と。徐々に、だけど確実に僕はのめり込んでいた。〝本を書く″というその行為に。