ロールプレーイング17

 僕はこの次の朝から配達を再開した。この数日回らなかった、僕の順路も、まだ忘れちゃいなかった。夏休みが終わるまで、二回雨の降る日があったけど。どうにかそれも乗り切った。〝おはよう″とか〝ご苦労様″とか次第に声を掛けられる数も増えていき、僕はその言葉から、やさしさをたくさん貰った。全く知らない赤の他人から欠けられる言葉がこんなに温かくて嬉しい物だったなんて、僕ははじめて知った。

 夏休み最後の日、僕はまとまったアルバイトの給料を受け取った。重たかった、なんでもない小さな封筒が、、、。
「良く頑張ったな。ペナルティーもなかったぞ。僚介よりも優秀だ。」
 井上さんは、そう言って。大きな手を僕の頭にそっと乗せた。
「受験が終わったら、、。またアルバイトにきてもいいですか?」

 もちろんだと井上さんは言った。いつでも待っていると。

 僕は、一つしてみたいことがあった。明日から学校に行く予定だったけど、、。その前に行っておきたいところがあった。8月最後の夕日はまだ少し高い位置にあったけど、僕は線路沿いに自転車を走らせた。碧いネオン、、一人で来るのはちょっと緊張したけど、、。僕はゆっくりと扉を開けた。
「あら、、、一君。」
 いつも通り麗華さんはきれいな人だった。僕は会釈をした。
「どうしたの?どうぞ座って。」
 僕は麗華さんに促されるまま、席に着いた。
「なにか飲む?コーラでいい?」
 はいと僕は答えた。麗華さんはグラスにコーラを注いでくれた。僚介が隣にいたときと同じように、、。
「ありがとうございます。」
 僕はコーラをゆっくりと飲んだ。弾けた炭酸からふわっと甘い香りが漂った。