そうしたらあいつに会う前の自分に戻れる気がして。

慶斗だけが全ての自分に戻れる気がして。

体がヒリヒリして赤くなるまで洗い続けた。

だけど"気がして"は、あくまで"気がして"だった。

戻れるなんてわけなかった。

考えたくないのに。

思い出したくないのに。

あたしのカラダはこんなにも初めて感じたものを覚えていた。

「ふっ、うぅっ。
けい、とぉ。」

お湯に浸かると体がしみて、その痛みが更に涙を流すことになった。

それだけ擦ったってこと。

それだけ……、触られたって、こと……。

――

「若菜、ご飯どうする?
やっぱりお粥の方がいい?」

「………………。
今日は、いいや。
食欲ない。もう寝るよ。
おやすみ。」

「そう……、おやすみ。」

部屋に戻って最初に目についたのは、乱れたベッド。

「ーーーーーっ!!」

シーツを剥ぎ取り、洗濯機に放り込む。

あんなベッドで、寝たくない。