フロアを下に見て、
賑やかなブラスバンドとチアリーディングの応援歌に、それぞれの声援が飛び交う。
私たちは何故か、
“来客用”
と書かれた最前列の席へと通された。
「ほら、居たよ」
ランちゃんの声に、恐る恐る下を覗けば……
ーー‥居た。
無駄にバカでかい坊主の姿。背番号は‥10。
「たぁ坊ーっ!!」
元気に手を振りながら叫んだ、よく通るランちゃんの声が、周りの応援をすり抜ける。
それが聞こえたのか、
10番がゆっくりとこちらを見上げた。
ーーーっ、
ズルイ。
‥ズルイよ。
なんて楽しそうに手を振るの。
なんて嬉しそうに笑うのよっ。
胸もお腹も、きゅぅぅんって縮まって
……苦しいっ。
「ほら、始まるよ」
もう1度、前を見ると
ブザーの音と共に、オレンジ色のボールが
ふわっと空に浮いた。

