電車の中はガヤガヤと楽しそうな声で賑やかだった。
「降りるよ」
「えっ、待って」
プシューっと開いたドアからは、一斉にガヤガヤが降りていく。
「あれ?みんな同じ方向に歩いてくよ?」
「一緒のとこに行くからじゃない?」
「え‥」
ランちゃんに強引に手を引かれながら着いたのは、隣町の高校。
「着いたー。えと、体育館は‥あっちみたいだね♪」
ランちゃんは脚が長いから、私はついてくのに精一杯だった。
開け放たれた体育館の青い扉をくぐると、
そこはもう、
熱気と歓喜が入り混じる、異様な空間。
「え‥もしかして」
掲げられた横断幕には、うちの高校とこの高校の名前。
それから……アイツの名前と、アイツの背番号が書いてある。
「試合‥?」
「そっ。たぁ坊は、あんたに見てて欲しいんだってさ」
「え、私?」
ランちゃんは、ニンマリと歯を見せた。
「3年が引退して、新しいメンバーになったわけ。それは分かるね?」
分かる。うちも3年生が引退しちゃったから、もうすぐレギュラーを決める選抜がある。
「たぁ坊、レギュラー入ったんだって」
「え?」
アイツ‥なにも言ってなかったのに。
私は、なんだか悲しくなった。
まぁ……私が話す隙を与えなかったのかもしれないけどさっ、
そんな大事なことっ!
……そんな、大事なことーー‥
何かがこみ上げてくる。
それを必死で堪えるように、手をギュッと固く締めて、下を向いた。
「ほらるぅ、上いくよっ」
「ん‥」
「なに泣いてんの。前を見なさいっ」
ランちゃんは、無理やり私の顔を持ち上げた。
首がゴキって鳴って、鼻がツーンと痛かった。

