たぁ坊とるぅ *32page*




ドクドクドクドク‥


聞こえる?

私の全身の心臓、こんなに働いてる。


全身がコイツの言葉に
反応して、

全身でコイツのことが
好きだって叫んでる。


それは、手で押さえていた口から溢れ出て……




「私、私っ‥」

「わーっ!待て待て待て待て待て」

「むぐっ」



溢れ出そうとした言葉を、コイツのデカい手で寸止めされた。




「待てっ焦るな。そーいうのは、男からさせろ」




私がコクコクと頷くと、そのデカい手は、今度は自分の顔を覆った。



「あー‥」



唸りながらコンクリートに寝そべるコイツの、この間まで。

私のドクドクを加速させる要因になるんだ。



「あのな、」



手を置いていた腹筋にグッと力が入り、いきなりまた顔が近くなった。


ドクンッ


心臓‥壊れちゃいそうだよ。








「俺‥、あいるのこと、好きだっ」




耳まで真っ赤。

はにかんだように笑うそんな顔、見たことなくて。


なんだかお腹がキュッと苦しく締まったから、涙が零れた。




「お、おい。泣くとこじゃねえだろ」

「だって、だって‥」




私は、ぐしぐしと流れ出るそれを拭って、真っ直ぐにコイツを見た。

そしてーー‥




「私も。大好きだよっ、優太♪」

「あ。お前、俺の名前知ってたんだ」

「アンタこそ」




ドクドクと心臓は変わらず働き者だけど。

なんだか、ほんわかとあったかい。




「ん」




あ……

今、解った。
こうやって、空を向けて差し出された手。




「うんっ」




いつも、私の手を待ってたんだね。




「わ、‥んっ」




繋がった手を引かれて
初めて触れた唇。

ちょっと、しょっぱかった。



おでことおでこをゴツンと合わせて

鼻と鼻が触れる近さで

瞳と瞳が真っ直ぐで。




「初勝利、おめでとうっ」




って、笑ったんだ。