たぁ坊とるぅ *32page*




キーンコーンカーンコーン‥



ついに2限目の終業を告げるチャイムが鳴り、移動しなきゃならない。



「やっぱヤダ!」

「ダメ」

「やぁあぁだぁああ」

「やだじゃないっ」

「会いたくないのー」

「会わなきゃわかんないでしょ?」



ランちゃんの長い脚の所為で、スタスタ早く着いてしまう選択授業の教室。

その道のりで、私は必死に抵抗を試みる。



「やっぱ具合悪いっ」

「じゅーぶん元気」

「お腹痛いっ」

「気のせい」

「あ、教科書わすれた」

「私が持ってる♪」



ふふーん♪と鼻を鳴らしながら笑うランちゃんには、私じゃどうしても勝てない。


会いたくない。
会いたくないのにっ!!


神様はイジワルだよ。

好きだって気づいた途端に失恋じゃんか。


次に話すことなんか決まってる。

“お別れしよう”

でしょ?



そんなのっ

そんなの……
‥っ、聞きたくないよ。



もしかしたら、ほんとは付き合ってなんかなかったのかもしれない。

元はといえば、アイツが適当に返事しただけだし。

私の勝手な勘違い‥?


そっか。
そうだよね。



普通は告白っていうものをしてから、めでたく恋人同士になるわけで。


‥私たちにはそれがないもん。



また涙は膜を張って前を滲ませた。

それをこぼさないように、一生懸命まばたきをしないようにするけれど。




「おい」




その声にビクッとなった私は、こらえきれず、大粒をひとつ零してしまった。