「教室まで見に行って、居なかったら帰ろう。うん、そうしよう」
けっこう大きな独り言を発した私は、小走りに玄関へ。
上履きに履き替えるのがめんどくさかったから、靴下のままで階段を上った。
私たち1年生は全部4階。学年が上がる毎に下がっていって、1階は先生たちだ。
「メールはなしっと」
しつこいくらいに携帯を確認するけど、出ることのないメールのマーク。
「なんだよ」
いつものイライラと、いつもはない、どこか寂しい感じが胸の中にあった。
アイツの教室は1番奥。
私は靴下のまま、足音もなく歩いてく。
だぁれも居ない廊下。
だぁれも居ない教室。
「やっぱり、居ないのかな‥」
するとーー‥
「‥っ、でも!!」
いきなり、泣いてるような、震えてるような、そんな女の子の声が聞こえたんだ。
ちょっとだけ足の回転を早くして、声がした教室まで行ってみる。
それは、1番奥の教室。
「たぁ坊っ」
「あぁ‥」
アイツの名前‥
アイツの声ーー‥
それに、泣いてる女の子。
私の心臓は何故か、クッと苦しく縮まった。

