たぁ坊とるぅ *32page*




「お疲れー」

「お疲れーまた明日ねー」

「うーん」



仲間たちと歩いて、門の前でバイバイする。



「たぁ坊とよろしくー」

「“と”って何だよっ」

「あははははっ」

「じゃーねー」



部活終わりでも元気の良い、女の子たちの笑い声が遠くになり、私は門の壁にもたれた。



「……いない」



そう。

いつもなら先に待っているはずのアイツが、いない。


携帯を見てもメールはなし。



「どうしたんだろ」



まだ終わってないのかなって思って、体育館まで行ってみる。

でもーー‥



「いなーい」



だぁれも居なかった。



「なんだ、終わってんじゃん」



じゃ、どこに行ったんだろ。


私はまた、門の前で待つことにした。



「遅くなるなら、メールくれれば良いのに」



それとも、先に帰っちゃったかな?


私たちはクラスが違うから、会えるのは帰り道だけなの。

お昼はそれぞれ友達が居るし‥。


話すキッカケになった選択授業だって、頻繁にあるわけじゃない。



「遅いなぁ‥」



メールしようと何度も携帯を開けた。

でも、何て打てば良いの?

分からなくて、パカパカと開けては閉じてを繰り返してた。



空の橙は落ちかけて、フライング気味に月が出てる。

今日の月は、
綺麗なまんまる。


夕陽に染められてるのか、少し‥赤い気がする。