S的?遊園地

「それと、二人の時は『平畠さん』は止めろ。」

平畠さんは、私の頬に手を添えながら言う。
言葉や行動の一つ一つにドキドキしてしまう。

「急に言われても...。」

『平畠さんは止めろ』と言う事は、下の名前で呼べと言う事なのだろうか?
下の名前で呼べと言う事は...?
突然、自信が無くなってきた。
確かに『嫌いじゃない』と言われたり、キスをされたりしたが肝心の言葉を言ってもらっていない。
不安で目線が揺らぐ。
それに気付いたのか、平畠さんは腕に力を込めて私を抱き寄せた。

「俺達付き合うんだろう?ちゃんと言えよ。」

その言葉に私は驚いた。
このタイミングで、当たり前の様に欲しかった言葉をくれる。
彼の中では、私に伝えたつもりだったのだろう。
それよりも、いつも自信家な平畠さんが私の言葉を待っている事が、何だか嬉しかった。
ちゃんと自分の思いを伝えよう。
私は、平畠さんの顔を見つめた。

「好きです。慎太郎..さん?」

流石にいきなり呼び捨ては出来ず、何だか中途半端になってしまった。

「お前は...何で疑問系なんだ!ちゃんと言えちゃんと!」

やっぱり納得出来なかったのか、いつもの調子で平畠さんに怒鳴られてしまった。
思わず反射的に身構えた。

「すみません!でも、いきなり呼び捨ては恥かしいので!」

必死に弁明する私に、平畠さんはため息を付いた。
『何でこんな奴と付き合おうと思ったんだろう。』という心の声が、今にも聞こえそうだ。

「分かった分かった。呼び捨てじゃなくてもいいが、慎太郎さんは止めろ。他人行儀感甚だしいから。」

まるで、子供をあやす様に背中をポンポンとたたかれる。
私は何だか腑に落ちなかったが、もう一度気を取り直して口を開いた。

「慎さんの事、好きです。」

改めて言葉にすると、凄くスッキリしたのが分かった。
ここ1、2週間のモヤモヤも、この一言で全部決着が付いた様な気分だ。