S的?遊園地

グゥという音がして、平畠さんの動きが止まった。
それは紛れも無い、私のお腹の音だった。
すっかり忘れていたが、お腹が空いたからあのパン屋に入ろうと思ったのだ。
私は、顔が真っ赤になって行くのが分かった。
(恥かしい!)
ちょっと良い雰囲気だったのに。
私は、違う意味でまた泣きそうになった。

「お前は、本当に見てて飽きないな。」

耐えられないと言わんばかりに、平畠さんは吹き出した。
笑いを抑えようとすればする程、肩が上下している。
平畠さんの素直な笑顔を見たのは、これが始めての様な気がした。
胸がキュンとなる。
今気が付いた。
私、平畠さんの事好きだ。

「さっき買ったパンしか無いぞ?」

平畠さんは立ち上がると、キッチンに置いてあったパン屋の袋を掴んだ。
やっと自覚した気持ちの余韻に浸っている私は、黙って平畠さんの行動を見守った。

「あ、クソ。おい、ちょっと来い。」

私は考えるより先に立ち上がると、キッチンへ向う。
手を洗った平畠さんは、冷蔵庫から卵を取り出した。

「働かざるもの食うべからずだ。サンドイッチ作るから手伝え。」

パン屋の袋をみると、バゲットが入っていた。
確かに、お昼にばゲットを丸かじり...と言うのは、少々味気ない。
私も手を洗うと、平畠さんから手渡された卵をボウルに割り入れた。

「スクランブルエッグにするから、そこの泡立て器で混ぜてくれ。」

言われた通りに、卵をかき混ぜる。
横目で平畠さんを盗み見ると、野菜を綺麗に切り分けている所だった。
私は微かな違和感を覚え、その行動をジッと見つめた。

「左利きがそんなに珍しいか?」

その言葉にもう一度手元を見ると、確かに包丁を持つ手が左手だ。
平畠さんについての知識がまた一つ増えて、何だか嬉しくなった。