ひとしきり昨日の出来事を話した彩は、小さく欠伸をした。

「今から寝たら?」

そう言う私に、彩は頷いた。

「今晩も会う約束してるし、そうする。」

彩は急に睡魔が襲ってきた様で、眠たそうに目をこすった。
彩の睡眠を邪魔するのも気が引けるし、私もお腹が空いてきたのでそろそろ帰る事にした。

「そういえば!」

立ち上がり部屋を出ようとする私の腕を彩が掴む。

「祐くんが『夏川さんの送別会あたりから、平畠と可奈子ちゃんの様子がおかしい』って言ってたけど、何かあった?」

私は、一瞬平畠さんとのモヤモヤを全て話してしまいたくなった。
しかし彩は幸せオーラ全開だし、何より寝不足だ。
今は親友の体調を優先すべきだと思った。

「ううん。何も無いよ。」

(また今度ゆっくり聞いてもらえばいいし。)
私は務めて穏やかに言葉を返した。

「それならいいんだけど。」

少し腑に落ちない顔の彩に別れを告げ、私は彩の家を後にした。