彩に連れられ、居酒屋の上の階にあるカラオケ店へ入る。
部屋には、右田さんや松本さんなど十数人が既に曲を選んだり、飲み物を頼んだりしている。
入り口の直ぐ側の椅子に腰掛けた。
流れる歌に耳を向けながら、部屋のドアを見つめる。
カラオケには来ず帰ってしまったのか、時間が経っても平畠さんは現れない。
私はずっとさっきの事が頭から離れなかった。
(私、平畠さんとキスした…よね?)
唇に軽く指を当てる。
まだ、平畠さんの温もりが残っている気がした。
人が歌っているのも耳に入らない。
(何でキスしたんだろう…。)
平畠さんの表情が目に焼き付いて離れなかった。
(始めは、凄く怒っていて、顎をつかまれて、キス…。)
あんなに大胆で情熱的なキスなんて、今までした事が無かった。
ゆっくり思い出すと、段々恥ずかしくなってくる。
(どうしよう、明日からマトモに顔見れないよ。)
私は火照った顔をみんなにばれない様に両手で覆った。